2014年11月23日日曜日

誤った二分法による誤った指導

小学校教諭のY・Sです。

給食の好き嫌いが多い児童に「世界には何万人という子ども達が食べたくても食べられなくて飢えや病気で死んでいる。ちゃんと朝・昼・晩3食食べることのできる国に住んでいて,好き嫌いをするとは甘い考えだ!」といった指導をしたことはありませんか?私も実は,若い頃こんな指導をしたことがあります。また,不登校や学校に行くのを渋る児童に,「アジアやアフリカの国には,鉛筆一つ教科書1冊さえなくても勉強をしたいと思っている子ども達が大勢いるのに,学校に行きたくないなんて甘いことを言うな!」というようなお説教を聞いたことはないでしょうか。どちらも違和感があり,効果的な指導・助言とは言えませんね。もう一つ,子どもの頃,ちょっとした怪我や病気でぐずっているとき,親からこんな言葉で慰められたことは誰にでもあるかと思います。「お前なんかよりもっともっと重い病気や怪我で苦しんでいる人もいるんだから,それくらいのこと我慢しなさい!」この言葉に奮起したという人は,おそらく少ないと思います。このような考え方を『誤った二分法』といいます。つまり,物事を無理やりに2つに分けて,それ以外の可能性をすべて無視したうえで理屈付けをするある種の詭弁です。
 そもそも,世界中に何万人もの飢えた子どもがいようと,貧しくて学校に通えない子どもがいようと,食べ物の好き嫌いや不登校の原因とはなんら関係のない別問題であるということです。大切なことは,好き嫌いや不登校,病気や怪我で苦しんでいるのは,当の本人なのです。もし,日本中の好き嫌いのある子どもが何でも食べるようになっても,世界の飢餓はなくなりません。不登校の児童が我慢して学校に行っても,学校がない国に学校が建つ訳ではありません。子ども自身が自覚により,「世界の貧しい国の子ども達に役に立てるような大人になろう!」と決意したなら別ですが。
 要は,このように極端な比較を使って子どもを説得するよりも,問題を抱えている“その子”に寄り添って,具体的な解決方法を一緒に見つけていくことが大切なのだと思います。


ー参考文献ー
 誤った二分法(あやまったにぶんほう、英: false dichotomy)あるいは誤ったジレンマ(英: false dilemma)は非論理的誤謬の一種であり、実際には他にも選択肢があるのに、二つの選択肢だけしか考慮しない状況を指す。密接に関連する概念として、ある範囲の選択肢があるのにそのうちの両極端しか考えないという場合もあり、これを白黒思考 (black-and-white thinking) などと呼ぶ。なお "dilemma" の先頭の "di" は「2」を意味する。2つより多い選択肢の一覧が示され、その一覧以外の選択肢が存在するのに考慮しない場合、これを誤った選択の誤謬 (fallacy of false choice) または網羅的仮説の誤謬 (fallacy of exhaustive hypotheses) と呼ぶ。 ーWikipedia よりー

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